復刻! 東映まんがまつり 1973年 夏

大沼弘幸

発売元:東映ビデオ
発売元:東映ビデオ

 名作や傑作と呼ばれる作品は、時代を超えた普遍的な面白さを持っている。だから、たとえモノクロであろうとスタンダード画面であろうと、今見ても面白い作品はいくらでもある。

 それを承知の上で、あえて言う。そういう普遍的な面白さとは別に、その作品と同時代に生きた人間にしか味わえない感動があるのだと。

 そのことを改めて思い知らせてくれたのが、この『東映まんがまつり』シリーズである。たとえば『復刻! 東映まんがまつり 1973年 夏』には、完全新作の『マジンガーZ対デビルマン』と『仮面ライダーV3対デストロン怪人』、総集編の『ロボット刑事』、テレビのブローアップ版の『バビル2世』『魔法使いサリー』の6本が収録されている。『マジンガーZ対デビルマン』や『仮面ライダーV3対デストロン怪人』などは既にDVD化されているが、こうやって1本のDVDにまとめられると、そこからはまったく別の味わいが醸しだされてくる。

 この『東映まんがまつり』を見たときの映画館の佇まいや客席の様子、そして館内に漂う臭いまでが記憶の彼方から蘇ってくる。いや、そればかりか、その年の夏休みの思い出まで……。

 つまり、この『東映まんがまつり』シリーズの最大の特徴は、個々の作品を楽しむだけではなく、子供の頃の大きなイベントであった、あの『まんがまつり』(文字通り、子供にとっては大きなお祭りだった)の思い出を追体験できることにあるのだ。

 もちろん、それぞれの作品も充分に面白い。『マジンガーZ対デビルマン』を改めて見ると、現在の戦隊VSシリーズの基本がこの作品にあることがよくわかる。主人公同士が最初は対立し、後に手を組むという戦隊VSのフォーマットは既にこの作品の中にある。『仮面ライダーV3対デストロン怪人』は、テレビシリーズでも話題になったあのメチャクチャでかい爆発(以後の特撮ヒーロー番組でも、ここまで爆煙が高く上がる爆発は見られない)をバックに、V3・1号・2号がバイクで同時にジャンプするというオリジナルのオープニングをわざわざ新撮しているのが驚きだ。

 ちょっと笑ったのが総集編の『ロボット刑事』。1話から12話までの総集編であるため、基本設定などをナレーションで紹介しているのだが、千葉真一の登場シーンで「新條敬太郎役の千葉真一は新條刑事役の千葉治郎のお兄さんだ」というナレーションが流れるのである。それまで、フィクションであるドラマ世界の説明をしていたのに、いきなり現実世界の説明になってしまう。でも、当時の子供たちはなにも不思議に思わなかったような気がする。なぜなら、みんな、そういう気分で見ていたから。

 この6本立てで、総計174分。途中休憩や予告編の上映なども含めれば、3時間以上も映画館に居たことになる。でも、退屈だったとか早く帰りたいとか思った記憶はない。むしろ、そんなにも長く映画館に居られて、映画を見続けられることが嬉しかった。「お祭り」は長く続けば続くほど幸せだったのである。

作品データ

【スタッフ】監督:勝間田具治、山田稔、奥中惇夫、内田一作、折田至、他

【キャスト】石丸博也、宮内洋、千葉治郎、池田駿介、神谷明、他

商品リンク

著者プロフィール

大沼弘幸(おおぬまひろゆき)

 1955年生まれ、宮城県出身。アニメ誌の編集を経て、小説・脚本の執筆、またサウンドドラマの演出も手がける。主な作品に「ハード・リベンジ、ミリー 復讐の序曲」(小説)、「桃太郎電鉄 キングボンビーの逆襲」(小説)、「孤独のグルメ」(CDドラマ演出)等がある。