X-MEN:ファースト・ジェネレーション

聖咲奇

販売元: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
販売元: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

 と、言うわけでアメコミである。コミックスの映画化は30年代の連続活劇『フラッシュ・ゴードン』(邦題は『超人対火星人』)辺りからだと思うが、同じ頃やはり連続活劇で『スーパーマン』や『バットマン』『キャプテン・アメリカ』などが実写ヒーローとしてスクリーンに現れている。ただ、当時は現在ほどに特撮技術が進歩していなかったので、どちらかと言うと、本来アメコミが得意としていたダイナミズムよりは『ハラハラドキドキ』のストーリー展開を中心に作品が構成されていたのだろう。

  しかし1978年、クリストファ・リーヴの『スーパーマン』がリリースされ、特撮を自在に使ったアメコミ映画がその可能性を開いた。長足の進歩を遂げたデジタル技術がこれに加わり、1989年『バットマン』と来て、21世紀直前『X-MEN』が登場する。

  ところで、この前アメリカで脚本を書いている友人から「最近コミック雑誌が売れない」と云う話を聞いた。「此れ又異な事を仰る」と思っていたら、映画のダイナミズムが漫画に取って代わったのだと云う。CG特撮で創られるヒーローの活躍がコミックスの表現力を凌駕したと考えるのはちょっと浅薄過ぎるのかもしれないが、少なくともそれによって絵で描かれたコミックスがマニアの物になった事は確かだろう。  そこで、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』である。スパイダーマンと並んでマーヴェル・コミックスの看板シリーズだが、その人気のあまり、スピンオフやサイドスト-リーがやたらと多く、設定や人物関係も複雑化している。初登場は1963年、生みの親は編集者スタン・リーと漫画家ジャック・カービーである。

  この『ファースト・ジェネレーション』は、映画シリーズとしては4本目だが、X-MEN結成の物語になっている。今流行りの「プリクェル」と云うヤツだ。ここには、何故ミュータントが疎まれるのか、何故プロフェッサーXが車椅子なのかなど様々な疑問に対する回答が用意されている。中でも大きいのは、マグニートーとプロフェッサーXの考え方が何故にああも違っているのかと云う疑問に対する回答である。そこには差別と迫害の問題が色濃く影を落としている。

  ナチスによって差別され命まで危うくされたユダヤ人エリック、ミュータントとして才能を開花させた彼は、今度はごく普通の人間から差別されることになる。ナチスがユダヤ人を迫害した裏には、自分達より優れた者に対する恐れと、いずれ敵に回る確信があった。そんな世界を背景に、超能力の存在を認識しているナチス士官との関わりでエリックの能力が開花する。

  片やチャールズは裕福な白人の家庭に育ち、何不自由のない子供時代を過ごしている。高等教育を受け、自分の好きな研究によって教授となった。しかし、エリックと関わる事で彼も又差別と迫害の中に巻き込まれて行く。

  この二人は能力者として影と光である。同じ立場に居ながら、同じ物を見ても見方、感じ方が全く違う。ただ、これ以前のシリーズ3作では具体的な過去の描写がなかったために、エリック(マグニートー)は極悪非道で類型的悪役、チャールズ(プロフェッサーX)は慈悲深い穏健派と云う単純な図式にしか見えなかった。

  この『ファースト・ジェネレーション』の面白さは、単にオリジンを見せると云う事だけではなく、キャラクターのメンタルな面に深みを加えている点にある。特にエリック・レーンシャーの描き方は、チャールズに対するそれよりもはるかに丁寧であり、愛情に満ちている。だから、映画のラストシーンがマグニートーの誕生になるわけである。

    20世紀フォックスは、この『ファースト・ジェネレーション』が新たなシリーズになると語っているが、既に2006年製作予定の『X-MEN:ラスト・スタンド』の情報がネットに上がっている。コミックスの最初期メンバーが全員登場、エンジェルやサイクロプス、フェニックスと呼ばれるジーン・グレイ、もちろんビーストも出る。旧シリーズであまり活躍しなかったアイスマンやコロッサスなどにも活躍の場が与えられるようだ。

  大規模な特撮を使った見せ場はサンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジだそうで、どんな破壊シーンを見せてくれるのか楽しみである。又、ロボットファンに朗報。対ミュータント用巨大ロボット「センチネル」が遂に登場する。

作品データ

【スタッフ】監督:マシュー・ヴォーン 脚本:アシュリー・ミラー、ザック・ステンツ、ジェーン・ゴールドマン、マシュー・ヴォーン

【キャスト】ジェームズ・マカヴォイ マイケル・ファスベンダー ケヴィン・ベーコン

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著者プロフィール

聖咲奇(ひじりさき)

 1952年生まれ、京都府出身。『宇宙船』(朝日ソノラマ)の創刊に立ち会い、構成・執筆を担当。SF・ホラー映画やガレージキットを紹介し、日本でのブームに貢献する。著書に『フラッシュ・ゴードンの思春記』『神骸都市』(竹田啓朔名義)『電子頭脳映画史』等がある。